1年後に定年を迎える知り合いから相談のメールが届きました。「定年後もしばらくは仕事を続けたいと思っているけれど、働きすぎるともらえる年金額が減るって本当?収入のために仕事を続けるのに年金が減らされるなんて、仕事の意味がなくなるわ!」とのことでした。定年後に仕事を続けた場合に年金と収入の合計金額に応じて年金が減額される「在職老齢年金」について心配しているようです。

 

年金の減額は働くシニアにとっては重要な問題ですよね。定年の年齢が引き上げられたこと、定年を迎えても体力や気力が充実したシニアが多いことが要因となって働くシニアが増えています。自分の年金も減額されるのではないかと悩んでいる人がいるかもしれません。ちょっと調べて見ようと思います!

 

定年制度の変化

日本に定年制度が普及したのは1950年代中頃。当時の定年の年齢は55歳でした。現代の感覚でこの55歳という年齢を考えると、若すぎるようにも思えます。けれども、その頃の日本人男性の平均寿命が60代半ばだったことを考えると、早すぎるともいえないようです。

 

2013年(平成25年)の改正高年齢者雇用安定法により、希望者は65歳まで働けるようになりました。平均寿命が男性82歳、女性87歳と伸びている現代では、65歳といっても身体能力はまだまだ若く、一昔前の50代のレベルともいわれています。身体レベルや気力の充実度を考えると、これからも働くシニアは増えていきそうですよね。

 

仕事を続けるシニアが増えている

内閣府が発表した「平成30年版高齢社会白書」によると、60歳以上で仕事を続けている人の割合は、男性で60~64歳で79%、65~69歳で55%。女性で60~64歳で54%、65~69歳で35%なのだそうです。70歳以上で仕事を続けている人は、男性で30%、女性で20%を超えるという結果も出ています。

 

定年後は、ゆっくりと人生を過ごしたいという人がいる一方で、働けるうちはいつまでも働きたいという人も増えているのですね。定年後も仕事を続けるのは、収入のため、老化を防ぎたい、いつまでも若々しくいたい、友人や仲間を作りたいといった理由があるようです。

 

働くシニアが知っておきたい保険や年金の制度

 

シニアが仕事を続ける上で気をつけたいことのひとつに、保険や年金などの制度があります。例えば65歳以上になって(一部の人は60歳未満でも)、それまでと同じように仕事を続けていると、年金を減額されることもあるので注意が必要なのです。働くシニアが知っておきたい保険や年金の制度について紹介します。

 

雇用保険

労働時間が週20時間以上で、31日以上継続して雇用される見込みがある労働者(学生は省く)が、必ず加入することになる雇用保険。条件さえ満たしていれば、正社員、派遣、アルバイト、パートなどの立場に関係なく加入できます。雇用保険に一定期間以上加入していた人が退職し引き続き働く意思がある場合、ハローワークに申請することで失業手当を受けられます。

 

この雇用保険ですが、2017年(平成29年)から「⾼年齢被保険者」として65歳以上の労働者についても適用されるようになっています。

 

後期高齢者医療制度

75歳以上になると、仕事を続けているいないにかかわらず「後期高齢者医療制度」の対象になり、後期高齢者医療に加入することになります。所得により保険料の負担率が変わり、原則的に年金から天引きされますが、国民健康保険からは脱退することになるため、二重に支払う必要はありません。

 

「後期高齢者医療制度」は、国民健康保険の支出額が増加したことから、支出が少ない社会保険とのバランスをとるために、2008年(平成20年)に施行されました。1983年(昭和58年)から続いていた「老人保健制度」から「後期高齢者医療制度」に移行した結果、75歳以上の患者の負担額が増えることになりました。

 

在職老齢年金

「在職老齢年金」は、60歳以降で年金を受けとりながら仕事をしている場合、収入に応じて年金が減額または支給停止になる制度のことです。この制度の対象となるのは、厚生年金に加入しながら働く年金受給者で、基礎年金受給者は対象にはなりません。年金の減額には、どのような基準が設けられているのでしょうか?

 

2020年度の基準額は、65歳未満で年金+月収(賞与含む)が月28万円、65歳以上で年金+月収(賞与含む)が月47万円以上あると、年金が減額されます。また、年金+月収(賞与含む)が月57万円を超えると、年金は支給停止になってしまいます。

 

それぞれをくわしく説明していきます。

 

65歳未満の在職老齢年金

 

基準になるのは、基本月額(老齢厚生年金の年額を12で割った額。加給年金は除く)+総報酬月額相当額(月給+直近1年間の賞与を12で割った額)の合計です。この合計金額により、全額支給または減額が決定されます。

 

・全額支給されるのは合計が28万円以下の場合

基本月額+総報酬月額相当額=28万円以下の場合は、年金は全額支給されます。

 

・減額されるのは合計が28万円以上の場合

基本月額+総報酬月額相当額=28万円以上で、年金の基本月額が28万円以下、なおかつ総報酬月額相当額が47万円以下の場合。

      ↓

 (基本月額+総報酬月額相当額-28万円)×1/2の計算式が適用されます。

 

例えば……

年金の月額が10万円、総報酬月額相当額が20万円なら、(10万円+20万円-28万円)×1/2=1万円となり1万円が減額されます。老齢年金として受け取れる年金額は、10万円-1万円=9万円になる計算です。

 

上記以外には、収入の違いによる以下の3パターンが設定されています。

  • 年金月額が28万円以下で、総報酬月額相当額が47万円を超える場合

(47万円+年金月額-28万円)×1/2+(総報酬月額相当額-47万円)

 

  • 年金月額が28万円を超える人で、総報酬月額相当額が47万円以下の場合

総報酬月額相当額×1/2

 

  • 年金月額が28万円を超える人で、総報酬月額相当額が47万円を超える場合

(47万円×1/2)+(総報酬月額相当額-47万円)

 

※65歳未満で年金がもらえるのは、男性なら1961年4月1日、女性なら1966年4月1日以前に生まれた人が対象になります。

 

基準額の変更が決定している

2020年(令和2年)に成立したの年金制度改正法により、2022年(令和4年)4月から65歳未満の在職老齢年金の基準額が緩和されることが決まっています。これにより基準額の28万円が47万円へ引き上げられるので、今よりも働きやすくなりそうです。

 

シニアが知っておきたい雇用保険や後期高齢者医療制度、在職老齢年金について紹介しました。在職老齢年金は制度自体がややこしい部分がありますが「65歳未満で年金と給料の合計が月28万円、65歳以上で月47万円以上になると年金が減額される」と覚えておくといいかもしれません。年金と収入のバランスを検討した上で、どのような働き方をするのかを考えてみてくださいね。

 

 

参考URL

・働きながら年金がもらえる「在職老齢年金」の真実

https://money-bu-jpx.com/news/article023994/

 

・「平成30年版高齢社会白書」

https://www8.cao.go.jp/kourei/whitepaper/w-2018/zenbun/pdf/1s2s_01_01.pdf

・主婦job

https://part.shufu-job.jp/news/knowledge/8813/