健康情報

【対談】「前向きな気持ち」で細胞からアンチエイジングを~医師・医学博士 日比野 佐和子先生~

細胞を元気に保つ「前向きな気持ち」で老化を防ぎ、若々しく

木下 先生は、再生医療を用いたアンチエイジングの最前線に身を置かれています。早速ではありますが、最新の研究について教えていただけますか。

日比野 私が手掛けるアンチエイジング分野において、重要な役割を果たすのが「幹細胞」という細胞です。もともと細胞は分裂をすることで身体の機能を守っていますが、染色体末端にありDNAの緩衝器のような役割をする「テロメア」は細胞分裂のたびに短くなっていきます。それ以上分裂できない「ヘイフリック限界」と呼ばれる長さまで短くなると、細胞分裂が停止し、この限界を迎えると細胞は自死(アポトーシス)します。ところが、幹細胞にはこのヘイフリック限界がなく、新しい細胞を生み出すことができます。ただし幹細胞自体も老化により、その機能が衰えると考えられています。そこで、この幹細胞を自身の体内から抽出し、体外で培養して増やして、必要な箇所に戻して再生修復する研究を行っています。最近では、薄毛になった頭皮に培養によって増殖させた毛包幹細胞を注射し増毛したり、歯根膜を再生することによる歯科再生治療の可能性も高まったり、これまでは難しかった領域の治療が実現しつつあります。

木下 素晴らしい科学の進歩ですね。先生は、クリニックで治療を行う医師としてもご活躍されていますが、現在はどのようなアンチエイジング治療が受けられるのでしょうか。

日比野 一般的にアンチエイジングの治療というと、しわに注入するヒアルロン酸やしみを消すレーザーなどをイメージされる方も多いと思います。ただそれらは、疲弊した細胞をより酷使しているため、老体にむちを打っているようなものです。
一方、私の行っている治療は、肌のコラーゲンを生み出す大元の細胞を増やし、内側から肌を再生、ハリや弾力性を生み出すといった、根本的な治療です。対症療法ではないので、自然な若々しさもかなえられます。

木下 先生から見て、我々はどのように老化に向きあっていくとよいとお考えでしょうか?

日比野 いくら再生医療によって新しい細胞を生み出しても、生活習慣が乱れていると、結局は細胞の老化が進んでしまいます。逆にいえば、生活習慣を正すことで、身体中の幹細胞を活性化させ、若々しくいることができるのです。なかでも大切なのが、皆さまの考え方や感じ方。ネガティブな心の状態でいると、身体の老化を進めてしまいます。私は以前、長生きしている方々を調査したことがあるのですが、共通していたのがポジティブな姿勢でした。

木下 そうでしたか。私もストレスへの対処には気をつけています。特に効果を感じているのは運動ですね。汗を流しているときは悩まずに済みますし、自己肯定感も高まります。

日比野 それはいいですね。細胞の老化を防ぎ、キレイに歳を重ねるためには、正しい食事・睡眠・運動の習慣を基本に、心の在り方を整えることが大切です。毎日必要な栄養が摂りきれない場合には、補助的にサプリメントを活用するのもおすすめです。

生活習慣を変えて、細胞から若返りを

木下 生活習慣を正すことで、身体中の幹細胞の活性化が期待できると伺いました。再生医療を用いなくても、若返りできるのですね。

日比野 はい。細胞の活性化に特別なことをする必要はありません。睡眠・食事・精神(呼吸法)・運動・環境など、普段の生活を改善するだけで、自己治癒力が高まり、若々しくいられます。

木下 そうでしたか。それなら簡単にできそうですね。

日比野 まず大切なのは睡眠を7時間しっかりととることです。睡眠不足になると身体の細胞が劣化します。すると、体調不良や生活習慣病を招きます。また、睡眠は長さだけでなく、質が重要です。特に、就寝前にスマホやパソコンなどを見ると脳が覚醒し、深い眠りにつけなくなってしまうので要注意。幸せホルモンとも言われているセロトニンを分泌させることができれば、良質な睡眠をとることにもつながります。良質な睡眠をとることができれば、身体の免疫力や再生力が正常に働き、若々しさの要でもある幹細胞の修復を促すことにもなるのです。

木下 睡眠の仕方もアンチエイジングに関わるのですね。

日比野 睡眠だけでなく、食生活も重要です。例えば、サバやサンマ、マグロなどの青魚。これらに含まれるオメガ3脂肪酸は細胞の炎症を抑え、幹細胞の老化を防いでくれます。生きていくうえで必要不可欠な酸素も、その一部は活性酸素などに変化し、細胞を攻撃します。紫外線やストレスなどによっても、活性酸素は増え、体内で炎症を引き起こします。こうした炎症から細胞を守り、修復するのに青魚が役立つのです。

木下 日本人が慣れ親しんできた青魚に長寿の秘けつが隠されているんですね。運動面ではどうでしょうか。

日比野 寝る前に軽くストレッチすることが効果的です。細胞の隅々まで血液が流れることで栄養が行きわたり、睡眠中の疲労回復につながります。適度な運動は、βエンドルフィンの分泌を促進し、心身をリラックスさせるだけではなく、免疫力を上げることも報告されています。加えて、筋力低下はアンチエイジングの大敵。意識的にウォーキングをすることなどで防ぐことが大切です。また、深呼吸による瞑想もおすすめです。静かな空間で心地よいと感じる姿勢で目を閉じ、ゆっくりと深呼吸するだけ。このとき、少しほほ笑みながら、宇宙からエネルギーをもらって、身体の細胞が生まれ変わっていくようなイメージをしてみましょう。瞑想(マインドフルネス)は身体をリラックスさせるだけでなく、科学的にもストレスホルモンの分泌を低下させたり、細胞の炎症を低下させるなど、細胞(神経など)の修復に関係していることも最近、報告されています。

木下 ハードな運動でないため取り入れやすいのがよいですね。最後に、細胞に良い影響を与える息抜きの仕方も教えてください。

日比野 日々のお楽しみには、赤ワインとチョコレート、できればカカオが多いダークチョコがいいですね。どちらも、高い抗酸化作用をもつポリフェノールを含み、血管障害の予防など細胞の老化防止に役立つことがわかってきています。ただし、それぞれアルコールと糖分を含むため、摂り過ぎにはご注意ください。

 

 
 

\ブロリコ健康情報配信中/
友だち追加

 

  • この記事を書いた人

Imagine Global Care

「世界にまだない技術で世界中の人々の健康寿命を延ばすこと」が我々のミッションです。みなさまの健康や日々の暮らしを豊かにする情報を発信していきます。

-健康情報