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【対談】寝たきりの予防はもちろん、運動はそれ自体が生きがいになるんです ~ソウル五輪金メダリスト 鈴木大地さん~

うまくいった姿をイメージすると
目標が実現しやすくなりますよ

ゲスト:鈴木大地さん(左)1988年ソウル五輪の100m背泳ぎで金メダルを獲得。1992年に現役を引退。 母校である順天堂大学で教鞭をとりながら、2015年初代スポーツ庁長官に就任。(公財)日本水泳連盟、日本オリンピアンズ協会会長、国際水泳連盟(FINA)理事をはじめ様々な要職を務めている。

木下 鈴木さんは、現役時代には水泳選手として、近年では初代スポーツ庁長官としてオリンピックに深く関わられてきました。

鈴木 多くの規制はありましたが、世界中からアスリートを東京に招き、昨年はオリンピック、パラリンピックを実現できました。医療従事者や一般の方々の協力があったからこそ無事に開催できたと思います。スポーツ庁長官としての任期は、2020年9月までで、当初の予定であれば任期内に実施されるはずでした。退任後の開催となりましたが、スポーツ界と連携して、取り組みました。

木下 オリンピック初となるスケートボード競技をはじめ、感動的な場面がいくつもあった素晴らしい大会になりましたね。

鈴木 アクティブな競技からアーチェリーのような静的な種目まで、バラエティに富んだ全33競技が実施されました。ご覧いただいた皆さまそれぞれが、選手の活躍に励まされ、自ら体を動かしたくなるようなきっかけとなっていたらうれしいですね。

木下 また、昨年には順天堂大学に新設された、スポーツ健康医科学推進機構の機構長に就任されましたね。

鈴木 スポーツと医学、異なる分野のように思われますが、ともに体に関わる意味では深くつながっています。例えば、年齢を重ねるうちに体が弱っていくフレイル(虚弱)をはじめ、医学だけでは解決のできない健康の課題があります。そこでスポーツと医学の両輪、学内外の組織と連携をとりながら、社会課題の解決を目指す取り組みをスタートさせました。

木下 そうでしたか。私はもともと、調剤薬局のチェーン店を経営しておりましたが、薬だけでは解決できない、健康寿命を伸ばす健康食品の普及に取り組んでいます。薬局のお客さまは慢性疾患の方が多くいらっしゃり、血圧やコレステロールを下げる薬を処方されていました。重篤な疾患を防ぐものではありますが、一生薬を飲み続けなくてはなりません。そこで、病気の予防を応援できないかと、研究を重ね健康食品事業を始めるに至りました。

鈴木 病気の予防には運動とともに食への配慮は欠かせませんね。ロコモ(移動機能の低下)やフレイルを防ぐためには、筋力トレーニングのほか、たんぱく質の摂取も大切です。

木下 アスリート、行政の長官、そして民間のリーダーとさまざまな分野で活躍されていますが、鈴木さんが、困難に打ち勝つために心がけていることはありますか?

鈴木 目標を達成したときを何度もイメージすることです。実は水泳は高校2年生まで、なんとなく続けていました。そんなあるとき、コーチから今後の目標を聞かれ、「日本で1番になりたいです」と答えました。するとコーチが、「今ならオリンピックを目指せるよ」と言ってくれたのです。その瞬間、オリンピックの選考会で1番になってガッツポーズをとる姿がパッと浮かんだんです。以来、そのイメージを何度も思い浮かべることで、本気で練習に取り組めるようになりました。目標を設定し、努力し、達成することがこんなに楽しいこととは思いませんでした。まさに、念ずれば花開くですね。

寝たきりの予防はもちろん
運動自体が生きがいになるんです

木下 鈴木さんは昨年、順天堂大学に新設された、スポーツ健康医科学推進機構の機構長に就任されましたね。シニア世代にとって、スポーツなど運動をすることの意義を教えていただけますでしょうか。

鈴木 日本人の平均寿命が延びているなか、シニアの方がこの先も、健康的な日常生活を送りながら、人生をエンジョイしていくためには、ある程度の筋力が必要になってきます。以前伺った、日本人女性初の宇宙飛行士、向井千秋さんのお話で、印象的なものがありました。それは、宇宙空間は重力がないので、筋肉を使わない状態で長く滞在していると地球に戻ってきた際、体が思うように動かなくなるということ。そのため、宇宙にいる間、1日3時間ほど無重力でもできる運動をされているそうです。

木下 やはり筋力は使わないと衰えてしまいますね。

鈴木 はい。ですから私たちも同様に、ふだんから体を動かしておかないと、フレイル(虚弱)やロコモ(移動機能低下)、寝たきりになりやすくなってしまうのです。

木下 健康寿命を延ばすのに運動は欠かせませんね。

鈴木 運動はまたそれ自体が生きがいにもつながるんです。体を動かして汗をかくと、幸福感と自己肯定感が高まります。クオリティー・オブ・ライフ(人生の質)の重要性が説かれていますが、運動こそ手軽に人生を充実させる手段だと思います。

木下 本当にそうですね。ただ、コロナ禍がなかなか終わらないこともあり、思うように運動ができない方も多いようです。どうしたらよいでしょうか。

鈴木 こんな時代だからこそ、手軽にできることから運動を楽しみましょう。いわゆる競技スポーツではなくても、犬の散歩やお祭りの盆踊りでも、体を動かすことの楽しさがありますよね。なので、まずはみなさん外に出てみましょう。近所を歩いたり、自転車に乗ったりするだけでもいいんです。屋外でゴルフのコースを回られる方も増えていらっしゃるようです。雨の日などは屋内であっても、体操やストレッチができます。最近では、運動のレッスンなどをインターネットの動画でも見られますので、活用するのもいいでしょう。

木下 運動を日常に組み込んでしまうのがいいですね。85歳になる私の母は、散歩だけでなく、階段を上がったり、家事をしたりすることで家のなかでも体を動かしています。私は普段プールで水泳をしています。ほかにもできるときにはマリンスポーツ、ウイングフォイルを楽しんでいます。海辺ではスポーツを通じて知り合った人々があちこちで談笑しているのですが、みなさんイキイキとして楽しそうですね。

鈴木 無理なくほかの人と交流するきっかけになるのも運動の魅力ですね。例えば、公園などでスピーカーからラジオ体操が流れると、人がなんとなく集まって来て、一緒に体操をして、終わるとそれぞれに去っていく風景を今もよく見かけます。友人とまではいかないけれど、運動を通してゆるく交友関係をもつことができ、充実した時間を過ごすこともできるんです。

木下 最後に読者のみなさまにメッセージをお願いいたします。

鈴木 一度きりの人生だから、楽しみましょう。例えば、散歩をして、花が咲いていることに気づく。そうやって感動できるネタを毎日集める。そういう感性を大事にすることで、充実した日々を過ごすことができると思います。

木下 本日はありがとうございました。

 

Biography

 

鈴木 大地さん

Prf.  Daichi Suzuki
1988年ソウル五輪の100m背泳ぎで金メダルを獲得。1992年に現役を引退。 母校である順天堂大学で教鞭をとりながら、2015年初代スポーツ庁長官に就任。(公財)日本水泳連盟、日本オリンピアンズ協会会長、国際水泳連盟(FINA)理事をはじめ様々な要職を務めている。

 

木下 弘貴

イマジン・グローバル・ケア代表取締役
1967年生まれ。早稲田大学政治経済学部卒業。調剤薬局を開業し、110店舗まで拡大。東京大学大学院医学系研究科修了。保健学博士。2006年イマジン・グローバル・ケア株式会社設立。

 

 

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