フォトグラファー武藤奈緒美の「みる」日々 連載シリーズ

遠くからずっと

残暑お見舞い申し上げます。フォトグラファーのむーちょこと、武藤奈緒美です。

 

前回、前々回と触れてきたウェブサイトのリニューアルを8月1日に無事おこなえたことをここに報告致します。バンザイ!

 

武藤奈緒美ウェブサイトはこちら 「むーちょで候。」

 

思い立ってから年単位で時間が経ってのミッション完了。会社勤めだったら仕事ができない人認定をされるレベルの遅さだよなあと半ば呆れ、半ば完了できたことに安堵し、作業追い込み中に絶っていたビールを8月1日の夜にぐびぐび飲みました。

 

この作業、別に誰かに頼まれたわけではなくあくまで自分事案件だから、なんだかんだとその都度自分に言い訳して先送りにしてきたわけですが、本腰入れて取り組み出したら欲がどんどん出てきて、あの写真もこの写真も載せたい!で取捨選択の連続でした。掲載した写真たちは、どれもこれも愛しい瞬間の記録です。

 

自分が選んで撮ったその瞬間は、写真という形で記録された時点で私から切り離され、目で確認できる、共有できる瞬間になります。

私はそこに写った瞬間をただただ素直に愛しいと感じます。

以前の自分は「どうだ、いい写真撮るでしょ、えっへん」みたいな気持ちが時折顔をのぞかせていたんですが、今はそういう瑣末な自己主張はなりをひそめ、撮れてよかった、残せてよかった・・・そう思うようになりました。撮ることに気負いがなくなったんでしょうかね。

 

ウェブサイトのTOPページには10枚の人物写真を選びました。比較的最近撮影したものでまとめましたが、一枚だけだいぶ以前に撮った写真を選んでいます。

私自身ずっと好きな写真で、被写体の友人もとても大事に思ってくれている、出産して間もない彼女を見舞って撮った一枚です。一緒に写っている赤ちゃんは現在中学2年生、鉄道大好き少年に成長しました。

彼の小学校入学のタイミングでUターンし今は山陰に暮らす彼女らと、最後に逢ったのは3年前の京都で開催している野外音楽フェスの会場。その後新型コロナウィルスの流行に阻まれ逢えずじまいでしたが、この秋再開するそのフェスで久しぶりに逢えることに・・・ですが、音楽に合わせてぴょんぴょん跳ね、会場で走り回っていた3年前の少年は、今回は不参加とのこと。ああ、とうとうその時期が訪れてしまったか。家族と行動するよりも友人とつるむ方を優先する時期が。

おなかにいるときからずっと気にかけてきた友人の子どもが二人いて、そのうちの一人がこの鉄道少年です。本や鉄道グッズを贈ったり、学校で落語を覚えて披露したと聞いたときには噺家さんからいただいた手ぬぐいと扇子を贈ったりしました。

 

彼らの年齢からすれば、母親と同世代の他人はたいてい「〇〇ちゃんのお母さん」であることが多いと思うんですが(自分の子どもの頃がそうでした)、そこに当てはまらない私は彼からあだ名の「むーちょ」で呼ばれています。この何者なのか不確かな感じのスタンスを私は気に入っていて、「おばちゃん」とひとくくりにされないよう注意を払い、遠くに住んでてたまに本とかを贈ってきて何年かにいっぺん泊まりに来る「むーちょ」という唯一のカテゴリーを維持しています。見守るというほどのことはしていませんが、遠くから見ている、気にかけている、そんなところでしょうか。

幼いときから絵や工作で創意工夫を発揮しなんでも自分で作ってしまう、人懐っこくて行き当たりばったり出会う人とたちまちおしゃべりを始める、発想力豊かで好奇心旺盛な彼が、どんなふうに10代を送り、どんな将来をイメージして学校を選ぶのか、そしてどんな仕事に就くのか、とても興味があります。同時に、友人夫妻が彼をどのように育て導き、どうフォローしていくのかにも興味があります。これって選択次第では自分にももしかしたらあったかもしれない人生のかたち、アナザーサイドを見つめるような心地なのかもしれません。

書いていたらこの家族にたまらなく会いたくなりました。コロナの感染が収まったら、溜まったマイルを使って山陰にひとっ飛びしよう!

 

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  • この記事を書いた人

武藤 奈緒美

1973年茨城県日立市生まれ。 國學院大學文学部卒業後、スタジオやフリーのアシスタントを経て独立。 広告、書籍、雑誌、パンフレット、web等で活動中。 自然な写真を撮ることが信条です。 ここ10年程で落語などの伝統芸能、着物の撮影を頻繁にやっております。 移動そのものが好きで、その土地その土地の食べ物や文化に関心が強く、声がかかればどこにでも出かけ撮っています。 趣味は読書、落語や演劇鑑賞、歴史探訪。 民俗学や日本の手仕事がここ数年の関心事項です。 撮影を担当した書籍に「柳家喬太郎のヨーロッパ落語道中記」(フィルムアート社)、「さん喬一門本」(秀和システム)、「かぼちゃを塩で煮る」(絵と文 牧野伊三夫 幻冬舎)、「落語家と楽しむ男着物」(河出書房新社)など。[HP むーちょで候。]http://www.mu-cyo.com

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