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【対談】普段の食生活の見直しで 薬局に来る人を減らしたい ~薬剤師・薬膳アドバイザー 片山 尚美さん~

普段の食生活の見直しで
薬局に来る人を減らしたい

木下 片山さんには長く、薬膳のコラムをお書きいただいています。そもそも片山さんが薬膳に興味を持ったきっかけは何だったのでしょうか?

片山 私は薬学部を卒業後、薬剤師として働いています。医療従事者として患者さんのためにできることは何かとずっと考えてきた中で、「薬局に来る人を減らすことがゴール」だと思ったのです。そのためには、若いときから病気にならないからだを作ること。そしてそれは、日頃の〝食事〟が大切だと気付き、薬膳にたどりつきました。

木下 なるほど、私の考えととても似ていますね。以前経営していた100店舗以上の調剤薬局には、慢性疾患の患者さんが非常に多くいらっしゃいました。そこで血圧や血糖値を下げる薬を出すのですが、病気そのものが治るわけではないのですね。対症療法の限界を感じて、そもそも病気になりにくいようにしたり、生活習慣の見直しで改善したりすることがとても重要だと思ったのです。

片山 いま病気になっている人をどう治療するかも大切ですが、そうではない方々が病気にならないためにどうするか。非常に共感できます。

木下 薬膳を含む東洋医学も、私が東大で学んだ公衆衛生も、予防という観点や人間と自然の摂理を重ね合わせる考え方に親和性がありますね。

片山 薬膳というと難しくお感じになる方も多いと思いますが、実は皆さん、自然と実践されていることが多いんです。その日ご自身が食べたいものや、からだが欲するものを食べること。それが薬膳の基本だと思っています。

木下 アメリカの公衆衛生の教科書には、冒頭に「健康にいちばん影響を与えるのは食事だ」と書いてあります。

片山 薬膳の考え方を知ると、自分の健康状態が客観的に見えるようになります。暑い時にはほてりを冷ます食材、元気がない時にはエネルギーのある食材と、自分の体調や状態に合わせて必要なものがわかるようになる。薬膳って、自分を大切にするためのヒントであり、幸せになるためのツールなんです。

足りないものは補えばいい。
それが薬膳の考え方です。

木下 薬膳をひと言で表すとどんな風に言えますか。

片山 簡単に言えば、旬のものを食べて健康になりましょう、でしょうか。木下さんは、夏になると食べたくなるものはありますか?

木下 ウナギやアユ、それにナスやトマトなどの夏野菜もしっかり食べます。旬のものを旬にいただくのがいちばんおいしいですから。

片山 まさに薬膳を実践されていますね。ウナギはからだの元気を補ってくれますし、夏野菜はからだを冷ますものが多いので、暑い時期のからだのほてりを冷ましていきます。概念とか理論とか難しいことを考えなくても、多くのみなさんが日頃からされていることが薬膳そのものなんです。

木下 旬のものをおいしいと感じることって、これを食べるとからだにいいと本能的に知っているのかもしれませんね。

片山 薬膳は基本的に、多すぎたら引き算、足りなかったら足し算をして、プラスマイナスゼロになるようにバランスを取る考え方です。夏だったら熱さでエネルギーが奪われていくので、補うための食材を足す。汗で水分が出ていくのだから、潤う食材を足す。また陰陽五行に添って見てみると、夏は「心」という時期で赤い色と呼応しているので、カツオやトマトなど赤い食材が適しているのです。

木下 なるほど。足りていないものを補うということでいえば、健康食品をお届けするのも同じ思いです。

片山 夏の赤い食材と言うとスイカもありますが、昔から塩を振って食べますよね。あれ、甘みを感じるためだけではなく、科学的にも意味があるんです。水分の多いスイカですが、利尿作用があるために、ただ食べるだけでは、からだから水分が出て行ってしまう。そこで塩を振ることで、からだの細胞に水分がしっかりと入るようにしてあげているんです。

木下 面白いですね。薬膳や東洋医学の、これまで何千年もの歴史の中で経験的に得られてきた知識が、最新の科学による研究と合致してくる。東洋医学だ西洋医学だと別に考える必要はなくて、どちらも補完しながら利用できるようになるといいですよね。

片山 心の元気を補う食材もあるんですよ。たとえばイライラする気持ちがあったら、柑橘類などのさわやかな香りのものを食べると、気持ちが新鮮になります。

木下 心と体はくっついていますものね。心が健康であればからだも健康になる。いろいろなことを前向きに考えられるようになると、ストレスで不健康になるリスクも減ります。

片山 旬のおいしい食材を食べるのは幸せなことですが、それをどういうシチュエーションで誰と食べるかがいちばん大事だと私は思います。どんなに素敵な料亭のいいお料理でも、しかめっ面で食べていたらおいしくないだろうし、ジャンクフードだったとしても好きな人と笑って食べたら、悪いものも帳消しになるんじゃないかって思うのです。

木下 そうですね。楽しくごはんを食べれば、病気もなかなか寄り付かなくなるんじゃないかと私も思います。

片山 食事を楽しむのは、人生を楽しむための秘訣なのかもしれませんね。

木下 日々の食事を楽しみ、健康長寿を目指しましょう。本日はありがとうございました。

Biography

片山 尚美さん

Dr Hiroshi Takahashi
千葉大学大学院修了後、予防医学実現のため東洋医学を学ぶ。漢方と西洋薬の両立を目指し、薬剤師として薬局に勤務。薬膳アドバイザーとして全国でワークショップや講演会、レストランのメ
ニュー監修などを行う。「いっぽ」の人気連載「簡単! 薬膳レシピ」も監修。

 

木下 弘貴

イマジン・グローバル・ケア代表取締役
1967年生まれ。早稲田大学政治経済学部卒業。調剤薬局を開業し、110店舗まで拡大。東京大学大学院医学系研究科修了。保健学博士。2006年イマジン・グローバル・ケア株式会社設立。

 

 

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