旅行 稀人ハンター川内イオの東奔西走記 連載シリーズ

自然を感じながら本気の「おいしさ」を堪能。子どもも大人も大満足のクルックフィールズ

皆さん、こんにちは! 常識に縛られず、驚くような発想と行動力で世間をアッと言わせる「規格外の稀な人」を追いかけている、稀人ハンターの川内です。

 

僕は10年以上東京に住んでいるのですが、時々、無性に緑が恋しくなります。昨年のある日も、コンクリートジャングルの生活を抜け出して、広々とした自然の景色のなかで深呼吸がしたい! と発作的に家族で東京脱出。レンタカーでアクアラインを渡り、ピューンッと千葉に向かいました。

 

子どもにとっては広大な遊び場

目的地は、千葉県木更津市にある「クルックフィールズ」。音楽プロデューサーの小林武史さんが2019年の秋に開いた、農業と食とアートをテーマにした体験型の施設です。昨年、クルックフィールズで小林さんの取材をさせていただく機会があり、ワクワクするようなお話をたくさんお聞きしたんですが、取材の日は残念ながら休園日。そこで、改めてプライベートで訪問することにしたのです。

9万坪の敷地には、原っぱや有機野菜の農園が広がり、草間彌生など現代アーティストの作品が点在。牛や鶏、ヤギも飼育されていて、施設内で収穫された野菜や牛乳を使ったパン屋さんやレストラン、カフェもあります。

 

ここには子どもが遊ぶような遊具はないんですが、娘の様子を見ていたら、そんなものは必要ないとすぐにわかりました。きれいに刈り込まれた草の上をとにかく走る、走る! その先に目的地があるわけでもなく、ただそれが楽しいという様子で、全力疾走。

 

草地ではバッタが自在に飛び跳ね、排水を浄化するビオトープや水路にはメダカが泳ぐ。その姿を見るたびに、娘は「バッタ!」「メダカ!」と大喜びです。小屋にいる牛を見れば「うしさーん!」と声をかけ、畑で実る野菜を見れば、「大きいピーマン!」「きれいなトマト!」と教えてくれる。娘にとっては、クルックフィールズ全体が遊び場でした。

 

大人にとっても開放的で気持ちの良い場所で、慌ただしい日常で凝り固まっていた心と体がのびのびと解放されたような気がします。ところどころにアート作品があるのもいいアクセントになっていて、グングン歩きたくなりました。

 

衝撃的な卵かけごはん

僕らファミリーのテンションをさらにアップさせたのは、食。目が覚めるようなおいしいものがたくさんあったんです。

 

まずは、入り口からすぐ近くのミルクスタンドへ。そこでは、クルックフィールズで飼われているブラウンスイスという種類の牛の搾りたて牛乳が売られています。これが市販の牛乳とはまったく違う自然な甘みで、ゴクゴク飲める!

 

ランチは、ミルクスタンドの隣りに建つレストランへ。そこで食べた新玉ねぎのピザは、僕と妻、一緒に行った義理の妹3人一致の絶品だったんだけど(娘はピザはあまり好きじゃない)、なによりも衝撃を受けたのは、義理の妹が頼んだ卵かけごはん。え? と思うでしょう。

 

クルックフィールズで飼われている鶏は、広々とした鶏舎で自由に動けるように平飼い(地面の上で飼う方法)されています。しかも、市販の配合飼料は一切使わず、規格外で出荷できない農場の有機野菜、米ぬか、おから、麦などを自家配合した栄養満点の餌を食べています。

 

卵かけご飯には、このストレスフリーで元気いっぱいの鶏が生んだ卵を使っているのですが、それが尋常じゃない旨味! 卵かけごはんを一口食べた義理の妹は、「なにこれ……めちゃくちゃおいしいっ!」と目を見開いて驚嘆。

え、そんなに? と少々疑いながら食べてみたら、口のなかに広がる未知の体験。これは、間違いなく人生で一番うまい卵かけごはん! 普段、あまり卵かけごはんを食べない妻も感嘆するほどでした。そうそう、小林武史さんの取材時に、小林さんも卵かけごはんを絶賛していたんです。

 

ぜんぶおいしい

食後にまたミルクスタンドにより、目をつけていたソフトクリームを購入。これがまたしっとり滑らかで、スッキリとした甘みがもうたまらん! これには娘も大喜びで、口の周りがサンタクロースのひげになっていました。

「クルックフィールズ、ヤバいね」と言い合いながら、高台にあるシフォンケーキの販売店に向かって、またビックリ。上品な土壁がグルッと取り囲んでいて、まるで美術館のようなお店では、著名なパティシエ、小山進さんのレシピで、シフォンケーキが作られているのです。しかも! 専任のパティシエがパーク内で採れたあの鶏卵とあの牛乳を使って毎日焼き上げています。

 

ここで、僕らの目が釘付けになったのは、「3種のベリーのシフォンサンド」。最初に食べた義理の妹は、「なにこれ……口のなかで溶ける……おいしいっ!」と一瞬で心を鷲づかみにされていました。すかさず、僕も実食。ふわっふわのシフォンケーキの品のいい甘みとベリーの酸味が奏でる絶妙なハーモニー。シフォンケーキが口のなかで雪のようにはかなく消えて、すぐにもっと食べたくなる。これはもうなんていうか愛おしい! 

クルックフィールズの「おいしさ」への本気度を感じた僕らは、「ほかのものも、きっとぜんぶおいしいに違いない」と確信。パン屋と自家製ソーセージやハムを売っているシャルキュトリー(加工肉の販売所)で爆買いして帰りました。予想通り、ぜんぶがぜんぶ、見事に外れなし!

おいしいお店なら都内にもたくさんありますが、自然のなかでリフレッシュしながら、大人も子どもも、心も、体も、お腹も満たされるところはなかなかありません。旅好きの我が家では、再訪確実のリストに入っています。

 

稀人ハンターの旅はまだまだ続く――。

※クルックフィールズは、2020年7月に訪問しました。

 

  • この記事を書いた人

川内 イオ

1979年、千葉生まれ。ジャンルを問わず「規格外の稀な人」を追う稀人ハンター。新卒で入社した広告代理店を9ヶ月で退職し、03年よりフリーライターに。06年、バルセロナに移住し、ライターをしながらラテンの生活に浸る。10年に帰国後、2誌の編集部を経て再びフリーランスに。現在は稀人ハンターとして多数のメディアに寄稿するほか、イベント企画も手掛ける。 『農業新時代 ネクストファーマーズの挑戦 (文春新書)』 『BREAK!「今」を突き破る仕事論(双葉社)』等、著書多数。 ホームページ:http://iokawauchi.com/

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