稀人ハンター川内イオの東奔西走記 連載シリーズ

涼しくて気持ちいい!日本最北端のサファリパークでゾウに乗る

 

皆さん、こんにちは! 常識に捉われないアイデアと行動力で「世界を明るく照らす稀な人」を追いかけている、稀人ハンターの川内です。

外出するには気合いが必要な、暑すぎた8月もいよいよ半ばを過ぎましたね! そして、子どもたちの夏休みも最終盤に入ってきました。なかなか一緒にお出かけしづらい時期ではあるけれど、お子さん、お孫さんに夏の思い出作りをしてあげたい! という方もいると思います。もしくは、とにかく涼しくて開放的なところで癒されたい! という方にも読んでいただきたい! 今回ご紹介するのは、日本最北端のサファリパークです。

皆さんは、サファリパークという言葉から、何を思い浮かべますか? 僕は子どもの頃に聞いた富士サファリパークの有名なCMソングが頭に残っていて、その影響で(?)、「サファリパークといえば富士」という印象があったけど、実は日本各地にサファリパークはあるんですよね。その数あるサファリの中でも日本最北端に位置するのが、岩手サファリパーク。岩手県一関市の館ヶ森高原にあり、“天空のサバンナ”と呼ばれています。

世界的に珍しいホワイトライオンも間近に見れるサファリツアー

サファリバスに顔を突っ込んでエサを食べるキリン

普通の動物園とは違う、サファリパーク最大の見どころといえば、サファリバスやマイカーでゆっくりと走りながら放し飼いされた動物たちを見学するツアー! 取材の際、僕もサファリバスに乗ってツアーに参加しました。同乗者は、親子連れとカップル。草食動物には窓からえさをあげることができて、お父さんに連れられた少年は、窓のすぐそばまで寄ってくる動物たちを見て超ハイテンションに! 序盤にえさをすべて与えてしまい、続けてお父さんのえさも全て使い果たしていました(笑)。

サファリバスに背を向けるホワイトライオン

子どもの頃から動物が大好きの僕も、世界に30頭ほどしかいないというホワイトライオンの写真を撮ったり、窓からキリンにえさをあげて指をベロリと舐められたり、暇そうなライオンをこちらに向かせるために念を送ったりとサファリタイムを満喫……って、これじゃ、普通の観光客と変わらないよ。そうそう、僕は岩手サファリパークの名物にして大人気アトラクション、ゾウの背中に乗る「ゾウライド」の取材に来たんです。

僕は副支配人、中鉢さんの案内で、2頭のゾウのアニマルトレーナー体験をさせてもらうことになりました。ゾウの名前は、ブンミーとカンピアン。この2頭のメスには、復興親善大使という立派な役職があります。ラオス政府による東日本大震災の復興支援として、2012年10月から岩手サファリパークに貸し出されているのです。そして、ブンミーとカンピアンを操るのが、ラオスから来た3人のベテランゾウ使い。

副支配人の中鉢さん

驚いたのは、ラオスのサイニャブリ県という地域では材木運搬や畑の耕作のために日常的にゾウが働いていて、中鉢さん曰く、「日本人の子どもが自転車の乗り方を憶えるように、サイニャブリ県の子どもたちは6、7歳でゾウに乗るようになる」。同じアジアの国でも、まったく違う生活や文化があるのだと改めて実感しました。

人間のパートナーとして働いてきたゾウの仕事

さあ、ここからゾウ使いに弟子入り! ゾウ使いの一日は、ゾウ舎の水洗いから始まります。一晩で2頭合計100キロぐらいのフンをするというから、片づけるのはけっこうな重労働。フンのチェックも大切で、固くなったり、水っぽくなっていないかを見て、ゾウの体調を管理します。

掃除の次は食事。ゾウは大食漢で、1頭が1日70キロのえさを食べます。えさは地元の農家から購入している稲わらが30キロ、イネ科の植物チモシーが40キロ。人間と同じく、ゾウも太ると足を痛めてしまうので、「ほぼ水分で太らない」という稲わらの割合が重要になります。

ゾウ舎の掃除とゾウの食事は同時進行で進み、「ゾウライド」は開園と同じ9時から16時まで。僕が訪ねたのは平日だったから、ゾウもゾウ使いものんびりしていたけど、ゴールデンウイークなどには長い行列ができることもあるそう。

広々としたゾウライドのエリア

昨今、本来の生息地域に及ばない狭く閉ざされた環境で動物が飼育されることに対して動物園には批判もあるし、僕もその批判に同意する部分もあります。でも、ゾウに関しては少し事情が違います。

中鉢さんによると、アジアではゾウは長らく家畜として材木を運ぶ仕事などをしてきたのだけど、森林を保護するために伐採が厳しく制限された結果、人間と一緒に働いていたゾウは失業して「厄介者」として扱われているのです。

幼い時から家畜として飼われてきたゾウを自然に帰してもうまく生きていけない可能性が高いし、そもそも環境破壊によって野生のゾウが生きていける自然が失われてきています。そこで、タイに拠点を置くアジア産野生生物研究センターが主導して、人間のパートナーとして働いてきたゾウを保護し、仕事を与えるために、海外の動物園にゾウを提供してゾウライドなどを行っているのです。

ゾウライドを体験しておおはしゃぎする子どもの姿を見て、「ブンミーとカンピアンも、立派に仕事をしているんだな」と思いました。

ゾウの賢さを実感

へっぴり腰の僕

取材に行った日は平日でお客さんも少なかったので、僕もゾウ使いと同じように、ゾウの頭の上に乗せてもらいました。ついに気分だけでもゾウ使いになれた! と感慨もひとしお……になるはずだったけど、ブンミーが動き出すと上下左右にグラングラン揺れて、バランスを取るのに必死でそれどころではありません。

へっぴり腰になるとバランスを崩しやすくなるから、バランスボールにまたがるように体幹で均衡を保つのがコツらしいんだけど、めちゃくちゃ難しい。「気持ちいい!」とか言って余裕ぶっていたけど、実はビビりまくっていました。

ゾウはとても賢くて、ゾウ使いのさまざまな指示を聞き分けます。いくつかの言葉を教わったので、カンピアンに「ソン!(足を上げる)」と声をかけたら、完全に無視をされました。うまく伝わらなかったのかと「ソン!」を連発するも、鼻をブラブラさせながらそっぽを向いています。ゾウは信頼している人の指示であれば応じるそうで、きっと「お前、誰?」と思われたのでしょう。まだまだ修行が足りないということですね。

中鉢さんから「取材に来て、こんなに長くゾウのところにいた人はいない」と苦笑されながら、ゾウ使いの見習い取材は終わりました。

ブンミーとカンピアンは親善大使の役割を終えて2018年にラオスに帰国しましたが、岩手サファリパークには新しいゾウが来て、引き続きゾウライドを楽しめます。広大で涼しく気持ちのいい“天空のサバンナ”でのサファリツアーとゾウライド、心の底からおススメです!

稀人ハンターの旅はまだまだ続く――。

日陰でくつろぐ虎

ACCESS

岩手サファリパーク

https://www.iwate-safari.jp/

岩手県一関市藤沢町黄海字山谷121-2
TEL:0191-63-5660

 

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  • この記事を書いた人

川内 イオ

1979年、千葉生まれ。ジャンルを問わず「規格外の稀な人」を追う稀人ハンター。新卒で入社した広告代理店を9ヶ月で退職し、03年よりフリーライターに。06年、バルセロナに移住し、ライターをしながらラテンの生活に浸る。10年に帰国後、2誌の編集部を経て再びフリーランスに。現在は稀人ハンターとして多数のメディアに寄稿するほか、イベント企画も手掛ける。 『農業新時代 ネクストファーマーズの挑戦 (文春新書)』 『BREAK!「今」を突き破る仕事論(双葉社)』等、著書多数。 ホームページ:http://iokawauchi.com/

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