フォトグラファー武藤奈緒美の「みる」日々 連載シリーズ

写真を撮るときのあれやこれや

ご挨拶

初めまして。新しく書き手に加わりました武藤奈緒美、通称むーちょです。ふだんはフォトグラファーとして写真撮影の仕事をしております。

 

今回書きませんかと声をかけていただき引き受けたものの、さて何から切り出そうかと考えをめぐらせること数日。書いてみたいことはいろいろあれど、なんだか散漫になりそうな予感。何かひとつ方向性が欲しい。そうだ、「みる」を軸に書いていこうと方針が決まったのは、締め切りの4日前でした。

 

フォトグラファーという仕事柄、「みる」ことはかなり意識的な行為です。仕事以外のたとえば友人と食事をしているときにメニューの写真を見て、美味しそうに撮れているなあとか構図がイマイチだなあとかいちいち思ってしまう。素敵なワンピースを見かけるとどんな人が着てどんなシチュエーションで撮ったら素敵だろうかを想像してしまう。観劇中にストーリーそっちのけで何度も何度も「わたしならここで撮る!」とばかりに心の中でシャッターを切ってしまう。もうまっさらな気持ちで「みる」ことは未来永劫できないんじゃないかと思うほど。だったら今回いただいた機会を、日々の「みる」とそこから展開する事柄を伝える場にしていこう。そんなわけで「みる」日々を綴っていきます。どうぞよろしくお願いします。

 

カメラを購入するときに気にすることは

仕事柄「カメラを買いたいんだけどどれがおすすめ?」と訊かれます。写真を撮るのは好きですが、カメラそのものについては詳しくないどころかむしろ疎いわたしはこんなとき、「量販店のカメラ売り場のスタッフさんにお尋ねするのがいちばんです」と伝えます。さまざまなメーカーのカメラやお客様の要望に日々接している彼らはものすごい情報量をお持ちです。

・主にどんなシチュエーションで撮ろうと思っているか・・・たとえば家族イベントや日常のスナップ、ペットや趣味の写真など

→カメラのタイプやレンズ選びの参考になる

 

・撮った写真の用途・・・大きく引き伸ばして飾りたい、SNSで使う程度など

→カメラにどれくらいの機能を求めるかの参考になる

 

・予算はいかほどか

→かけようと思えばいくらでもお金をかけられるものなので、無理のない範囲での上限額を設定しておくのがおすすめです

 

・パソコンは持っているかどうか。また使い慣れているかどうか

→写真データが溜まってくるとパソコンの容量オーバーになることも。その場合の対処法も確認しておくと安心です

 

このあたりのことを事前に考えておいてスタッフさんに相談してみてください。

多機能だからと高額カメラを購入しても、使いこなせないと宝の持ちぐされ。重たいカメラを買ってしまって後々その重さが負担になって持ち歩かなくなってしまったらもったいない。

以前知人から、「もうじき孫が生まれるからこの機会に一眼デジタルを買いたいんだけどどこのメーカーのがいい?」と相談されたことがあります。時々お目にかかるお孫さんを撮るのでしたら一眼デジタルで構わないと思います。ですが、たとえば積極的に子育てのお手伝いをされるようでしたら、お孫さんを抱っこしたりベビーカーを押したりする機会も多いでしょう。また、おむつや洋服の替えなどで荷物がかさばることも考えられます。一眼レフだと場所をとるし荷物に感じてしまう可能性があるので、購入はお孫さんが歩くようになってからにして、最初はコンパクトデジカメかスマートフォンのカメラがかさばらなくて良いかと思いますよ、と伝えました。

 

「撮る」ってコミュニケーションなんです

どんなカメラを使っても共通して言えるのは、対象をしっかり見てください、ということです。「カメラマンさんはスマホで撮ってもやっぱり写真が違いますね」と言われることがありますが、対象をよく見て撮っているかどうかの違いだと思うんです。スマートフォンで記念写真を撮っている様子を見かけると、みなさん画面をちゃんと確認もせずあっという間にシャッターを切ってしまう。せっかくの機会が一瞬がもったいない。声かけひとつでだいぶ違った記念写真になるのですよ、これが!

旅行中のご夫婦が撮って撮られてをしているのを見かけると、おせっかいかなとは思いつつも「ご一緒のところをお撮りしましょうか?」と声かけします。遠慮される方ももちろんいます。せっかくだから・・・となったらまずは立ち位置をかえてもらいます。証明写真のように真正面真顔で立つ方が多いので、ちょっとだけハの字型に。次にカメラを向けて声かけ。「ご旅行ですか?あ、ご主人せっかくなのでもっと嬉しい!って顔しましょうか」なんて具合です。もちろん相手の雰囲気に合わせます、あまりかまって欲しくないという方もいらっしゃいますし。ノリのいいご夫婦だと腕を組んだり手を繋いだりに展開することも。第三者が声かけすることで、のせられちゃったという雰囲気が生まれるのだと思います。ちょっと照れて、でも満更でもないなあという表情をパチリ。声かけしながら4,5枚も撮るでしょうか。撮った写真を確認していただき、素敵なご旅行を!とご挨拶しおしまい。

・・・こうしてそのときのことを思い出しながら書き出すと、わたしけっこう介入していますね。押し付けにならないよう気をつけねばなりません。過去の行動を振り返ってみるのは大事だなあ・・・おおっ、ここにも「みる」が!

旅先で「お撮りしましょうか?」と近付いてくる人がいたら・・・それはわたしかもしれません。

 

  • この記事を書いた人

武藤 奈緒美

1973年茨城県日立市生まれ。 國學院大學文学部卒業後、スタジオやフリーのアシスタントを経て独立。 広告、書籍、雑誌、パンフレット、web等で活動中。 自然な写真を撮ることが信条です。 ここ10年程で落語などの伝統芸能、着物の撮影を頻繁にやっております。 移動そのものが好きで、その土地その土地の食べ物や文化に関心が強く、声がかかればどこにでも出かけ撮っています。 趣味は読書、落語や演劇鑑賞、歴史探訪。 民俗学や日本の手仕事がここ数年の関心事項です。 撮影を担当した書籍に「柳家喬太郎のヨーロッパ落語道中記」(フィルムアート社)、「さん喬一門本」(秀和システム)、「かぼちゃを塩で煮る」(絵と文 牧野伊三夫 幻冬舎)、「落語家と楽しむ男着物」(河出書房新社)など。[HP むーちょで候。]http://www.mu-cyo.com

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