稀人ハンター川内イオの東奔西走記 連載シリーズ

鳴子温泉郷発の野菜ジェラートにビックリ!

読者の皆さん、初めまして! 稀人(まれびと)ハンターの川内イオと申します。稀人って聞き慣れない言葉だと思いますが、それもそのはず。僕が自分で考えたネーミングなんです(笑)。僕が考える稀人とは、常識に縛られず、驚くような発想と行動力で世間をアッと言わせるような活動している「規格外の稀な人」。日本全国で彼ら、彼女らを発掘、取材してメディアに寄稿したり、イベントを企画したりすることを生業にしております。

あまりイメージが湧かないかもしれないので一つ例を挙げると、昨秋、農業界で革新的な取り組みをしている10人を取材した書籍『農業新時代 ネクストファーマーズの挑戦』を文藝春秋社さんから出版しました。稀人ハンターなんてふざけた肩書ですが、決して怪しい者ではありませんので、ご安心を!

そしてこのたび、縁あって当メディア『一歩一歩健康に「いっぽ」』にて「稀人ハンターの東奔西走記」というコラムを書かせてもらうことになりました。僕が日々の取材のなかで出会った稀人たちを、紹介します。どんなところに、どんな稀人がいるのか、楽しんでいただければ嬉しいです。

▼鳴子の野菜を広めたくてジェラート職人に

ということで、記念すべき最初の稀人は、日本で初めて「野菜ジェラート専門店」を開き、昨年3月に開催された「第4回ジェラートマエストロコンテスト決定!日本最高のジェラート職人」で優勝したジェラート職人、大澤英里子さんです。

6月某日、大澤さんのお店「なるこりん」がある宮城県の鳴子温泉郷まで行ってきました。待ち合わせ場所の川渡温泉駅につくと、そこは無人駅。プラットホームから周囲を見渡せば、目に入るのは森と畑。とてものどかな雰囲気で、気持ちのいい場所でした。

迎えに来てくれた大澤さんの車に乗せてもらい、10分ほどで「なるこりん」の鳴子店に到着。このお店は週末だけの営業で(要注意!)、平日は大澤さんがキッチンで黙々とジェラートを作っているそうです。

 

鳴子出身の大澤さんは高校卒業後に東京に出て学校に通い、働いていましたが、皮膚科の先生もお手上げというほどのひどい肌荒れに悩まされ、一度、実家に戻ったのが2004年。その時、鳴子産の野菜のおいしさに気づき、たくさん食べていたら、ずっと悩まされていた肌荒れが3カ月で治って、あらビックリ。

それから地元の野菜にポテンシャルを感じ、もっとたくさんの人に知ってもらいたい、食べてもらいたいと考えた時に浮かんだのが、子どもからお年寄りまで幅広い層に喜ばれる「ジェラート」というアイデアでした。

とはいえ、大澤さんはジェラート作りの経験なし。そのうえ、農家さんの知り合いもほぼいない。さらに、しっかりと野菜を使うジェラートは当時どこにもなかったそうで、2011年、宮城県松島のジェラート屋さんとコラボして、催事などで販売を始めました。

その3年後にプレハブで鳴子店を開き、2016年には大澤さんのお母さんが経営していたお店を改装して、製造所を開設。その後はすべて自分で作るようになり、水は鳴子温泉の温泉水、牛乳は鳴子上原酪農牛乳を使うなど、それまでよりもさらにこだわりのジェラートをどんどん作っていきました。

2017年には大澤さんがジェラートを作り始める前からいつも野菜を買いに行っていた、あ・ら・伊達な道の駅に2店舗目をオープン(こちらは年中無休です!)。そして2019年には、日本一のジェラート職人に!肌荒れに悩んで帰郷してから、15年が経っていました。

▼まったく新しいジェラート体験

さて、取材の日は、道の駅店で野菜とフルーツを使った12種類のジェラートを少しずつ食べさせてもらったんですが、まずはそれぞれの名称に目が釘付けになりました。

例えば、「氏家直子ちゃんの秘伝枝豆」「鳴子温泉 ゆさ果実工房さんのブルーベリー&ルバーブ」「鳴子のお米と花淵山の伏流水で仕込んだ鳴子の地酒・雪渡りの酒粕ミルク」などなど。なかでも一番インパクトがあったのは「地元うどキャラメル」でした。うどのジェラート!?

どのジェラートも味の想像がつかないという方がほとんどだと思いますが、12種類、すべて食べた僕が断言しましょう。まず、それぞれ、素材の味がしっかりとします。ちょっと風味がする、なんてレベルじゃなく、口に含んだ瞬間に「おお、枝豆さん!」「ああ、うどさん!」という出会いがある。その素材たちが、ジェラートのさっぱりした甘みと絶妙にマリアージュしていて、まったく新しいジェラート体験になること間違いなし!

あともう一つ付け加えるなら、なるこりんのジェラートは野菜たっぷりで甘さ控えめなので、罪悪感がわかない! これ、大人にとっては重要なポイントだと思います(笑)。そうそう、ジェラートで使う素材は季節によって変わるから、春夏秋冬、通いたくなりました。

ちなみに、あ・ら・伊達な道の駅は今年3月、道の駅の人気ランキングで全国1位に輝いたところ。直売所では鳴子の珍しい野菜が売られていたり、チョコレートで有名なロイズが本州唯一の直営店を出していたりと、ブラブラするだけでも楽しめるところです。

せっかく鳴子まで来たので、その日の夜はなるこりんのジェラートを取り扱っている旅館大沼さんに宿泊。この宿は8種のお風呂があって、楽天トラベル『湯めぐりができる人気の温泉宿ランキング』全国1位に選ばれたそう。宿から車ですぐのところにある離れの庭園貸切露天「母里の湯」は、まさに極楽。すっかり癒されて、翌朝、東京に戻りました。

稀人ハンターの旅はまだまだ続きます――。

 

  • この記事を書いた人

川内 イオ

1979年、千葉生まれ。ジャンルを問わず「規格外の稀な人」を追う稀人ハンター。新卒で入社した広告代理店を9ヶ月で退職し、03年よりフリーライターに。06年、バルセロナに移住し、ライターをしながらラテンの生活に浸る。10年に帰国後、2誌の編集部を経て再びフリーランスに。現在は稀人ハンターとして多数のメディアに寄稿するほか、イベント企画も手掛ける。 『農業新時代 ネクストファーマーズの挑戦 (文春新書)』 『BREAK!「今」を突き破る仕事論(双葉社)』等、著書多数。 ホームページ:http://iokawauchi.com/

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