稀人ハンター川内イオの東奔西走記 連載シリーズ

日本で「海外」を味わうなら大泉町へ!食べ歩きが楽しい日本最大のブラジルタウン

皆さん、こんにちは! 常識に縛られず、驚くような発想と行動力で世間をアッと言わせる「規格外の稀な人」を追いかけている、稀人ハンターの川内です。

 

僕は仕事で日本各地に行くたびに地方の食、文化、人の魅力を実感しているのですが、学生時代からバックパッカーなので、海外旅行も大好きです。でも、国外に行くのはしばらく難しそうですよね……。それなら、日本国内で「外国」を味わいたい! ということで、群馬県で一番小さな町、大泉町に向かいました。大泉町は、知る人ぞ知る日本最大のブラジルタウンなのです。

 

ブラジルタウンの由縁

え? ブラジルタウンってなに? なぜ大泉町? という方もいると思うので、簡単にその歴史を説明します。大泉町は戦前からの工業地帯で、戦後も工場が集まりました。しかし、高度成長期に入ると人手不足が深刻になり、外国人の働き手に頼るようになります。

 

そこで、1990年に入国管理法の大幅改正が行われ、日本人の父母を持ち、外国で生まれ育った日系2世、日系2世の父母を持つ日系3世とその家族に関しては、日本で働きやすくなるルールができました。

 

日本は1908年からブラジルへの移民を始めていて、現在、ブラジルに住む日系人は約200万人いると言われます。1990年前後、ブラジルは経済が低迷していたので、入国管理法の改正を機に、自分のルーツがある日本で働きたいという人が一気に増えました。

 

このタイミングで、人手不足に悩んでいた大泉町では70社以上が資金を出し合って独自の組織を作り、ブラジルで大きく求人をかけたので、大勢の日系ブラジル人がやってきたのです。

 

さらに大泉町では、役場や病院にポルトガル語の通訳を置いたり、企業が家賃を補助したりして、日系ブラジル人にとって住みよい町になろうと努力しました。その結果、多く日系ブラジル人が定住し、現在、大泉町のブラジル人は4600人超。大泉町の人口は約4万2000人だから、ブラジル人が約11%を占めます。

 

もちろん、日系ブラジル人は全国各地にいますが、大泉町は日系ブラジル人の数も、町の人口に対する比率もほかの市町村の倍以上。それが、日本最大のブラジルタウンと言われる由縁です。

 

そして僕は過去に二度、ブラジルを旅したことがあり、「どこが一番よかった?」と聞かれたら、必ず「ブラジル!」と答えるほど、ブラジルが大好き。だから、大泉町を選びました。

 

ブラジル的絶品ランチ

 

西小泉駅

大泉町へは、都内から電車を乗り継いで2時間ちょっと。大泉町という駅はなくて、西小泉という駅で降ります。小さな町なのでひとりでブラブラすることもできますが、僕は大泉町観光協会が提供している「インターナショナルタウン体験」メニューのなかから、「日系ブラジル人が町をご案内」プランに参加しました(1人1000円、5人以上から。1人の場合は5000円。要予約)。旅先では、地元のことをよく知っている方に案内してもらうと、二倍、三倍も体験が深くなりますからね!

 

僕を案内してくれたのは、観光協会スタッフのTさん。日本で生まれた日系3世で、日本語もポルトガル語も堪能なので、心強い! 車に乗せてもらって町なかへ行くと、ポルトガル語の看板があちこちに見えて、それだけでブラジルにタイムスリップしたような気分になりました。

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大泉町にはブラジル料理レストランもたくさんありますが、Tさんがランチに連れて行ってくれたのは、ブラジル系スーパー「Ci Brasil(シーブラジ)」。このスーパーのなかにある食堂が安くて美味しいと地元のブラジル人の間で評判なのだと聞いて、これこれ! と思いました。よそ者は、こういうローカル情報は得られません。

異国情緒いっぱいのスーパー店内!

僕は、ブラジルで大好物になった肉と豆の煮込みフェイジョアーダと、Tさんが「ブラジル人が大好きで、よく食べている」というイチボ(牛のお尻の下のほうの肉)のステーキを注文。これがもうブラジルそのものの味で、絶品でした。食後にスーパーのなかを歩いてみたら、日本では見ない商品が満載。お客さんもブラジル人ばかりで、本当にブラジルにきたようです。

▼楽しすぎる食べ歩き

シーブラジルの向かい側にあるスーパーも探索した後、すぐ近くのパン屋さん「トミ」に向かうと、オーナーの松山久美穂さんがいきなりの訪問を素敵な笑顔で迎えてくれました。松山さんと日系ブラジル人のトミハルさんの夫婦が開いたお店で、ネット上では「大泉町の人気店」「大泉町の名店」などなど、訪ねた人たちの口コミがたくさん投稿されています。

残念ながら、トミさんは50歳で亡くなってしまい、今は松山さんと息子さんが、スタッフと一緒にお店を切り盛り。松山さんが「これ、食べていって!」と出してくれたお店の人気商品、チーズパンの原料はキャッサバイモ(タピオカの原料!)と水、塩、チーズだけ。それはもうびっくりするほどモッチモチです。「せっかくだから、ブラジルのコーヒーも飲んでってね!」と食後のコーヒーまでごちそうになってしまい、その温かいおもてなしで、また僕のブラジル好きが深まりました。

 

この後さらに2軒のお店を巡り、この日6軒目は、アサイー専門店、その名も「アサイーヤ」。アサイーはブラジルのアマゾンを原産とする植物で、ブルーベリーに似た実は栄養満点のスーパーフードと称されます。ブラジルではアサイーのよく冷えたスムージーのようなものが町なかで安く売られていて、あまりのおいしさに僕は現地滞在中、毎日飲んでいました。その味が忘れられなかったんですが、アサイーヤで再会! まさにブラジルで恋した味でした。

結論。大泉町は、食べ歩きが楽しすぎる! ブラジルが好き、ブラジルに興味があるという方は、ぜひ一度、訪ねてみてください。大泉町が本格的にブラジルの雰囲気になるのは夜と聞いたので(笑)、僕は次回、1日滞在します!

 

稀人ハンターの旅はまだまだ続く――。

 

※この取材は2019年12月に行ったものです。

【大泉町観光協会】

https://www.oizumimachi-kankoukyoukai.jp/

 

 

 

  • この記事を書いた人

川内 イオ

1979年、千葉生まれ。ジャンルを問わず「規格外の稀な人」を追う稀人ハンター。新卒で入社した広告代理店を9ヶ月で退職し、03年よりフリーライターに。06年、バルセロナに移住し、ライターをしながらラテンの生活に浸る。10年に帰国後、2誌の編集部を経て再びフリーランスに。現在は稀人ハンターとして多数のメディアに寄稿するほか、イベント企画も手掛ける。 『農業新時代 ネクストファーマーズの挑戦 (文春新書)』 『BREAK!「今」を突き破る仕事論(双葉社)』等、著書多数。 ホームページ:http://iokawauchi.com/

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