旅行 稀人ハンター川内イオの東奔西走記 連載シリーズ

道の駅グルメナンバーワンを競う「道-1グランプリ」で3連覇!地域密着型の「ゆず塩ら~めん」

皆さん、こんにちは! 常識に縛らないアイデアと行動力で「世界を明るく照らす稀な人」を追いかけている、稀人ハンターの川内です。

あれ? と思った方、鋭いですね!

前回まで「世間をアッと言わせる規格外の稀な人」と書いていたのですが、最近、よく「稀人ってどういう人のことを指すんですか?」と聞かれるので、改めて考えました。それで、自分が取材したいのは「規格外な人」ではなく、独自の発想で地域や世の中を明るくする取り組みや挑戦をしている人だと気づき、言葉を変えてみました!

ということで、今後は新しい書き出しで始まります。さて、今回ご紹介するのはラーメン。もちろん僕は稀人ハンターなので、単においしいラーメンを食べました、という話ではありません。

道の駅グルメナンバーワンを競う「道-1グランプリ」

皆さんは、「道-1グランプリ」ってご存じですか? 道の駅の活性化を目的に2016年から始まったイベントで、全国の道の駅で提供されている食べ物を対象に、日本一おいしいものを決めるコンテストです。2016年から、京丹後市にある西日本最大級の道の駅、京丹後王国「食のみやこ」で開催されてきました。

昨年は新型コロナウイルスの影響もあって開催されなかったのですが、2019年までに計4回、実施されています。全国の道の駅からエントリーを募り、一次審査を突破した20駅が、会場となる京丹後王国「食のみやこ」に出店。2日間、来場者に自慢の一品を振る舞います。食のコンテストというと、グルメな審査員が難しい顔をしながら採点するイメージがあるけど、このイベントでは来場者の投票でグランプリが決定します。そう、最も多くの人が「おいしい!」と思ったものが優勝するというシンプルでわかりやすい方法です。

そして、全国の味自慢が集うこの大会で、第1回から3回まで「道-1グランプリ」3連覇を遂げたのが、栃木県にある道の駅もてぎのラーメン店、十石屋の「ゆず塩ら~めん」(640円)。純粋な投票で3回連続1位に選ばれるって、どんだけ来場者の心をわしづかみしてるんだ! と思いますよね。今回は、その背景について。

地域密着型ラーメンの誕生

実は僕、第1回でグランプリを獲得した直後の2016年10月、稀人ハンターの勘がビビビッと反応して、このお店の取材に行っていたのです。この時は、十石屋のリーダーの方と道の駅もてぎ企画広報の方に話を聞いたのですが、驚くべきことに、「ゆず塩ら~めん」は当時も今も珍しい、地域密着型ラーメンでした。

 

誕生のきっかけは、ゆず。国内最大級のサーキット場「ツインリンクもてぎ」がある茂木の町は、戦前から葉タバコの栽培で栄えていました。しかし、次第に葉タバコの需要が減り、同時に農業を辞めて仕事を探しに町を出る人が増え、1970年代には地域の過疎化が進んだそうです。そこで、立ち上がったのがひとりの男性です。自分が住む集落にたまたま生えていた、ゆずの古木に着目。病気に強く害虫もつきにくいゆずなら、農作業の手間があまりかからないうえに、低温貯蔵もできることから、1984年頃、集落を巻き込んで荒れ果てた農地に300本のゆずの苗木を植えました。これが契機となって茂木町でゆずの栽培が広がり、町の名産品になりました。

その活用法を考えようと、2005年頃から町の柚子を買い上げ、商品開発を進めてきたのが、道の駅もてぎを運営する第三セクター、株式会社もてぎプラザ。その過程の2012年、茂木町産のゆず皮、ゆず果汁を使い、サッパリとした酸味が塩味と絶妙に絡むゆず塩ら~めんが生まれたのです。

「ちょっとした香りづけでゆずを使うことではなく、しっかりとゆずの味がするラーメンを目指しました。茂木のゆずは一つひとつ手絞りしているから、機械搾りと違って苦味がありません。地元の農家で採れた野菜、そして地元の製麺所とのコラボレーションで、茂木にしかないラーメンができました」(道の駅もてぎ企画広報)

あえてチャーシューなどの肉を入れず、地元の野菜たっぷりのヘルシーさが受け、2012年に女性誌の「東京から日帰りできる道の駅グルメランキング」で1位に輝きました。それ以来の人気商品で、多い日には1日200杯を超える売り上げがあったそうです。

グランプリ受賞で売り上げが5倍に

そして迎えた、第1回「道-1グランプリ」。会場は京都、来場者はほとんど関西圏の人という完全アウェイの環境で、2日間で1200杯を売り、来場者の投票でトップに選ばれたのです。

初回の「道-1グランプリ」はメディアの注目度も高く、グランプリのインパクトは、「いつもの倍ぐらい売れたらいいな」と考えていた十石屋のスタッフの想像をはるかに超えるものでした。初代グランプリの報が全国に流れて以降、見たこともない数の客が押し寄せ、休日には開店1時間前の朝8時から行列ができました。その波が夕方まで途切れず、僕が取材に行った時点で、多い日には「ゆず塩ら~めん」だけで平日は400杯から500杯、土日は1000杯を超えたそうです。

取材の際、もちろん僕も実食しました。湯気から漂うゆずの香りが、鼻孔をくすぐります。うっすらとゆずの色がついた透明なスープも予想以上にくっきり、はっきりとゆずの風味。柑橘の酸味と塩味のバランスが絶妙のハーモニーを奏で、町内の製麺所と共同開発したと麺との絡みも良く、はしが進みます。野菜も豊富なので、ヘルシーなランチをしている気分でした。

 

ゆず塩ら~めんが人気になることで、茂木に来る人が増え、地元産のゆずの使用量も増えます。ゆず塩ら~めんに使用されている調味料「ゆずしお」やお土産版も販売されていて、その売り上げも少なくないはず。この地域密着型ラーメンが3連覇を果たしたということは、その分、地域にも大きな恩恵をもたらしているのです。そう考えると、茂木町の取り組みを応援するような気持ちで、気持ちよくラーメンが食べられます(笑)もし、茂木町の近くに行くことがあれば、ぜひ道の駅もてぎで、ゆず塩ら~めんを。ランチ時には少し並ぶかもしれませんが、その価値はあると思います。

 

 

 

稀人ハンターの旅はまだまだ続く――。

ADDRESS

道の駅もてぎ

栃木県芳賀郡茂木町大字茂木1090-1

https://michi-1.jp/

 

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  • この記事を書いた人

川内 イオ

1979年、千葉生まれ。ジャンルを問わず「規格外の稀な人」を追う稀人ハンター。新卒で入社した広告代理店を9ヶ月で退職し、03年よりフリーライターに。06年、バルセロナに移住し、ライターをしながらラテンの生活に浸る。10年に帰国後、2誌の編集部を経て再びフリーランスに。現在は稀人ハンターとして多数のメディアに寄稿するほか、イベント企画も手掛ける。 『農業新時代 ネクストファーマーズの挑戦 (文春新書)』 『BREAK!「今」を突き破る仕事論(双葉社)』等、著書多数。 ホームページ:http://iokawauchi.com/

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