旅行 稀人ハンター川内イオの東奔西走記 連載シリーズ

動物好き親子のお気に入りスポット!馬に乗り、触れて学べる馬森牧場

皆さん、こんにちは! 常識に縛られず、驚くような発想と行動力で世間をアッと言わせる「規格外の稀な人」を追いかけている、稀人ハンターの川内です。

 

僕は24歳から18年間、物書きとして仕事をしていますが、今から10年ほど前、一度だけ未経験の仕事に転職しようかと迷ったことがありました。上野動物園が広報を募集しているのをたまたま見つけて、応募しようと思ったのです。その求人は経験者を求めていたので、「無理だろう」と思い、応募はしませんでした。でも、毎日動物園に出勤して、動物たちに囲まれながら仕事をするなんて、素敵な仕事だなあと羨ましく思ったのを今でも覚えています。

 

そう、このコラムでも何度か書いてきましたが、僕は子どもの頃から動物が好きなんです。その遺伝子をしっかり受け継いでいるのか、僕の娘も動物好きに育っています。動物のなかで、娘が特に好きなのは馬。1歳の頃からあちこちで馬に乗せたり、触れたりさせていたので、その成果かもしれません(笑)。ということで、今回は僕と娘、そして妻もお気に入りの馬スポットを紹介します。千葉の南房総市にある馬森(まもり)牧場です。

 

直感に導かれて牧場を開設

馬森牧場は、とてもユニークな牧場です。現在、オーナーの菅野奈保美さんがひとりで4頭の馬のお世話をしているのですが、菅野さんはもともと自分で事業をしていて、馬と縁もゆかりのない生活を送っていました。

 

ところがある日、誘われて行った府中競馬場で厩舎にいる馬を見て、電撃的に「これだ!」と直感。それから乗馬クラブに通い始めます。その後、雑誌の占いコーナーに導かれるように、2008年、千葉県の南房総市で移住。しばらくして、隣接する土地の所有者から1.5ヘクタールもある丘陵地の購入をもちかけられると、「そこで馬の牧場を開こう」と即決しました。

 

その丘陵地は竹藪が生い茂っていましたが、菅野さんは自らチェーンソーを振り、重機に乗って開拓していきます。そして引っ越しからわずか1年後に、馬を購入。2頭、3頭と増えていき、同時に乗馬ができるようにトレーニングを進めて、2011年、馬森牧場を開いたのです。

 

一時期は馬が8頭まで増えましたが、今は4頭。半分になったとはいえ、ひとりで運営しているので、広く訪問客を受け入れているわけではありません。いきなり訪ねて来られても対応するのが難しいため、乗馬などの体験はすべて事前予約が必要です。言ってみれば、毎回、プライベートレッスン! しかも、あっという間に終わる「乗馬体験」ではなく、馬と人間の信頼関係や互いの心地よさを大切にしながらしっかり乗馬を教えてくれます。

プライベートレッスンだからこその遊び心も、嬉しいところ。僕らが初めて訪問した2016年2月(この時は同じく物書きをしている妻が菅野さんの取材をしました)、菅野さんが「ちびっこも馬に乗せちゃおう!」と、当時1歳の娘を馬に乗せてくれました。

 

最初は不安で泣き出しそうな顔をしていた娘が、馬が歩きだしてしばらくすると、楽しくて仕方ないという笑顔を浮かべて空を見上げました。この瞬間のことは、今も忘れられません。娘は馬に乗っている間、ずっと笑顔。以前に一度、バランスを崩してコテンと落ちたことがありましたが、びっくりして少し泣いた後、何事もなかったように馬上に戻りました。

娘の無限ループ

娘には、乗馬よりも楽しみにしていることがあります。馬たちに雑草を食べさせることです。一般的な牧場だと、馬のエサやりは体験プログラムのひとつになっていて、エサ自体が有料だったりします。以前に立ち寄った北海道の牧場は、数本のニンジンが500円! 娘が何度も「お馬さんにニンジンをあげたい」というので、2000円ほど支払ったことがありますが、内心、「た、たかい……」と白目になりそうでした。

 

千葉の某動物園では、小さな鍋に入れた牧草が100円。市営なので良心的な価格ではありますが、馬にあげると数秒でなくなります。そのたびに、娘に「もっとお馬さんに……」と言われて、何度「これぐらいの雑草、そこらへんでむしってきたい!」と思ったことでしょう。

 

馬森牧場では、そういうことがありません。菅野さんは、娘が馬房の近くで雑草をむしってきて、それを馬に食べさせるのを笑顔で見守ってくれます。しかも、スイセンの花や葉っぱを見せながら「これは馬に毒だからあげないでね」と教えてくれたりするので、大人の僕らも学びになります。

娘は馬が草をモリモリと食べてくれるのが嬉しくてたまらないらしく、雑草を取っては馬にあげるという無限ループ。だいたい1時間以上続いて、「そろそろ行こうか」と声をかけるのですが、飽きる様子はありません。僕は子どもの頃、ムツゴロウ王国で働きたいと思っていたので、娘が動物と楽しそうに触れ合っているのを見ると、心底嬉しくなります。

 

馬森牧場のプライベート感や菅野さんの馬やゲストとの距離感が僕らにはちょうどよくて、これまでに5、6回訪問しています。馬森牧場には一組限定のゲストハウスがあるので、だいたいいつも、そこに宿泊。馬森牧場に到着する前、もしくはチェックアウトした後に、ほかの場所で遊ぶというのが定番のコースです。おすすめは、以前にこのコラムで紹介した木更津のクルックフィールズとのセット。暖かい時期なら、車で5分ほどの岩井海岸に行くのも気持ちいいでしょう。

 

娘は今年7歳。いつまで一緒に行動してくれるのかわかりませんが、娘が「馬森牧場に行きたい」という限り、連れて行こうと思います。

 

稀人ハンターの旅はまだまだ続く――。

Address

馬森牧場

千葉県南房総市川上77

 

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  • この記事を書いた人

川内 イオ

1979年、千葉生まれ。ジャンルを問わず「規格外の稀な人」を追う稀人ハンター。新卒で入社した広告代理店を9ヶ月で退職し、03年よりフリーライターに。06年、バルセロナに移住し、ライターをしながらラテンの生活に浸る。10年に帰国後、2誌の編集部を経て再びフリーランスに。現在は稀人ハンターとして多数のメディアに寄稿するほか、イベント企画も手掛ける。 『農業新時代 ネクストファーマーズの挑戦 (文春新書)』 『BREAK!「今」を突き破る仕事論(双葉社)』等、著書多数。 ホームページ:http://iokawauchi.com/

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