稀人ハンター川内イオの東奔西走記 連載シリーズ

魚が泳ぐ清流で遊ぶ!毎夏2万人が訪れる「うしづま水辺の楽校」

皆さん、こんにちは! 常識に捉われないアイデアと行動力で「世界を明るく照らす稀な人」を追いかけている、稀人ハンターの川内です。

いやー、最近、どんどん気温が高くなってきましたね。このジメジメっとした薄暗い梅雨のトンネルを抜け出すと、青空がまぶしい夏! 僕は子どもの頃から夏が好きで、暑くなるにつれてテンションも上がります。

とはいえ、ここ数年、日本の夏は暑いというより、熱い。外に出ると汗が噴き出して、うかつに外で長時間を過ごすと気が遠くなるレベルです。

「灼熱」という言葉がぴったりの暑い日が続くと、冷たい水の中に飛び込みたくなりますよね!

海も良い。プールも良い。「川」はどうでしょう? 川で泳ぐ、川で遊ぶという選択肢を思い浮かべる人はあまりいないかもしれません。でも、海のように自然を感じられて、プールのように安全にも配慮されている川があるとしたら? そこは夏の遊び場として、とても魅力的なスポットです。

「平成の名水百選」に選ばれた安部川で遊ぶ

子どもたちが自然体験をしたり自然学習の場として川の水辺を活用する「水辺の楽校」という取り組みを知っていますか? 国土交通省が1996年からスタートしたプロジェクトで、現在、全国約290カ所で開催されています。

そのなかで、2009年の開校以来、学校が夏休みの開催期間中におよそ2万人を集めるのが、静岡市を流れる一級河川・安部川の畔、葵区の牛妻で開催されている「うしづま水辺の楽校」。ここは2017年、国土交通省が主催する「手づくり故郷賞」の一般部門に選定されています。それにしても、1カ月ほどで2万人とはすごい人気。2018年夏、その秘密を探りに行きました。

 

静岡駅から市の郊外に向かって車を30分も進めると、目の前に広がる意外なほど自然豊かで長閑な風景。「オクシズ」と呼ばれる、静岡市の中山間地の入り口にあたる牛妻地区に入ると、土手が見えます。その土手を越えた先で流れているのが安部川。環境省が認定する「平成の名水百選」にも選出されている清流です。

 

安部街道を進み、道路が分岐する直前に「水辺の楽校 入口」と書かれた大きなカニの看板があります。案内に従っていくと川沿いに広大な駐車場があり、車を降りて足を進めると、川の横にため池が3つ並んだようなスペースが目に入りました。ここが、安部川の伏流水を利用した「うしづま水辺の楽校」のフィールド。

 

水辺に近づいてみて、その透明度に驚きました。川底がくっきりはっきり見えるのです。約1万平方メートルの敷地には、「魚と泳ぐエリア」「魚のつかみ取りエリア」「水遊び場エリア」などがあり、実際に安倍川流域に生息するアユやアマゴなどが泳いでいます。

 

安部川を正面に見て右側の「魚と泳ぐエリア」では、水中メガネをつけ、網やバケツを持った大勢の子どもたちが、水の中をのぞき込んでいます。泳いでいる魚を取ろうとしているのです。

 

なにからなにまでDIY

その様子を見て、嬉しそうに目を細めていたのが「うしづま水辺の楽校」を運営する地元のボランティア団体・世話人会の方。世話人会が立ち上がった時からのメンバーです。

 

「『安倍川の素晴らしい自然を大人が責任を持って次世代を担う子どもたちに渡すこと』を目的に、1999年から安倍川フォーラムという会で同じような取り組みをしていました。その時は安部川を利用していたんだけど、川の状態で開催できる、できないが左右されるでしょ。だから、この場所を国交省に作ってもらいました。それで、2009年からうしづま水辺の楽校と名前を変えたんです」

 

特筆すべきは開校以来、誰からも、どこからも資金的なサポートを得ず、自力で会場を整備し、無料で運営していること。毎年、開校前の草刈りや施設、用具の修理などにかかる費用は開校日などにお祭りを開いて、出店の売り上げでまかなっているそう。さらに、子どもたちが遊ぶ筏やウォータースライダーなどもすべてボランティアによる手作り。徹底的にDIYのプロジェクトなのです。

子どもにとって、うしづま水辺の楽校のメインイベントは魚のつかみ取り。世話人会が開校日とお盆と最終日の計3回、子どもたちのために数百匹のアマゴ(マスの一種)を放すのです。開校日に放すアマゴを見せてもらうと、どれも10センチは優に超えていて、なかには30センチを超える大物もいました。

 

「この魚、どうしてるんですか?」という僕の疑問に対する答えに、思わず「えーーーっ!」とのけぞりました。

 

「養殖してるんだよ、10万匹。阿部川フォーラムの時代から。世話人会のメンバーみんなで世話してるんだ。エサをあげたり、掃除をしたり。それで水辺の楽校が始まると、2年ぐらい育てて大きくなった魚を連れてくるんだよ」

 

全国約290カ所の水辺の楽校のなかでも、子どもたちのために10万匹の魚を自分たちで養殖しているところはほかにないのでは?

ちなみに、毎年の水質調査の結果は「飲み水にしても問題ない」。これほどの清流で、水辺の生物を探したり、魚のつかみ取りをしたり、いかだやウォータースライダーで遊べるとなれば、ここはもう夏休みの子どもたちにとって楽園、子どもたちを外で遊ばせたい親にとっては救いのオアシスと言ってもいいでしょう。そしてもちろん、大人にとっても川の水はヒンヤリと冷たく、海水と違ってサラサラで気持ちいい! 2万人の人がここに涼をとりに来る理由がわかりました。

 

昨年は新型コロナウイルスの影響で中止になってしまいましたが、今年開催されたら、家族で訪ねてみようと思います。

 

稀人ハンターの旅はまだまだ続く――。

ACCESS

うしづま水辺の楽校

静岡県静岡市葵区牛妻安倍川河川敷

新東名高速新静岡IC(インターチェンジ)から主要地方道井川湖御幸線を北進(井川・梅ヶ島方面)約3㎞

※令和3年度は、新型コロナウイルス感染拡大防止のため開校していないそうです。

 

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  • この記事を書いた人

川内 イオ

1979年、千葉生まれ。ジャンルを問わず「規格外の稀な人」を追う稀人ハンター。新卒で入社した広告代理店を9ヶ月で退職し、03年よりフリーライターに。06年、バルセロナに移住し、ライターをしながらラテンの生活に浸る。10年に帰国後、2誌の編集部を経て再びフリーランスに。現在は稀人ハンターとして多数のメディアに寄稿するほか、イベント企画も手掛ける。 『農業新時代 ネクストファーマーズの挑戦 (文春新書)』 『BREAK!「今」を突き破る仕事論(双葉社)』等、著書多数。 ホームページ:http://iokawauchi.com/

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